新車値引き情報
更新日:2023.08.26 / 掲載日:2023.08.26

X氏の値引き大作戦 アクアから27.0万円引き!

強気のトヨタに大苦戦 越境作戦で“壁”を破れ 出たぁ、仰天の役員決裁

【プロローグ】 愛車はランサーセディア……というと、年季の入った読者は「おお、懐かしい」と声をあげてくれたと思いますが、若い読者は「なに、それ?知らんがな」となるでしょうね(笑)。
 三菱自動車が2000年に発売した小型セダンですが、数年後には“セディア”の名前は消えてしまいました。
 20年前にこのクルマを購入、以来、いまもまだ元気に走ってくれています。家族の一員として子どもたちの成長とともに過ごしたので思い出がいっぱい詰まっていて愛着だらけです。
 しかし、還暦を迎えて最新の安全機能の必要性をひしひしと感じてきました。セディアはまだ車検切れまで半年以上ありますが、半導体の供給不足による昨今の納期の長期化を考えると、そろそろ買い替え時です。
 候補は別記のコンパクトカー。本命は先進の安全機構を備えて、しかも燃費効率に優れたアクアかな。妻は運転しないので後席が広いフィットを推しています。運転が苦手な長女は「とにかく小さくて扱いやすいクルマ」とのことでノート推し。息子は「カッコイイ!」という理由からSUVのヤリスクロスに興味津々。ばらばらの意見をいかにまとめるか……親父の腕の見せどころです。
 さあ、20年ぶりの値引き交渉を楽しむでぇ~。

【交渉1日目(土曜日)】 まずは妻と娘を伴って、近所のトヨタA店へ。予約を入れておいたのですぐにアクアを試乗できた。電動の走りっぷりに感動する。
 いよいよ商談開始。相手は新人で息子と同い年。1年生にしては商品知識が豊富で口には出さないが(良く勉強してるやないか~い)と感心する。
「アクアは納車時期を確約できないほどの売れ行きです」
「そうはいうても、半年もかからんでしょ?」
「すみません、現時点ではなんともいえません」
「そんなぁ、フルチェンして間もないプリウスやクラウンを買いに来たわけちゃうで。メーカーのホームページには『アクアの納期は3~5か月』って書いてあったでぇ」
「お急ぎなら、いますぐに契約したほうがいいですよ」
「ほな、値引きで頑張ってくれるな」
「アクアは売れ行き好調なので値引きは5万円です」
「そうそう、息子はヤリスクロスもええいうてるけど?」
「これも値引きは5万円です。納期は1年くらいかかる可能性があります」
 えっ、マジかい。1年待ち……“ヤリクロ”はあかんな。
「まあ、今日は試乗がメインってことで終わるわ。次回は精一杯の金額提示、頼むな」
 その足でホンダA店へ。ここでも予約を入れておいたのでスムーズに試乗できた。フィットの後部座席は広く、足元の空間も余裕がある。視界もいいし、室内も明るい。ただし加速はアクアのほうが力強く感じる。
「アクアも検討しとるけど、家内はフィット推しやぁ。価格面でも頑張って欲しいので、本気で見積もってやぁ」
 セールスさんは「わかりました!」と元気がいいが、提示してきた値引きは5万円。まあ、最初はこんなもんか。

【2日目(日曜日)】 セディアの点検もかねて付き合いのある三菱へ。担当セールスさんが応対してくれた。
「Xさん、次の車検はどうされますか? そろそろ買い替えはいかがです?」
「アクアとかフィットを考えとるんやけど、三菱には適当なコンパクトカーがないな。ラインナップ、弱いよね。ちょっと高いけど、エクリプスクロスがどど~んと値引くなら考えてもええで」
「PHEVなら国から補助金55万円が出ますよ」
「あかん、PHEVは完全に予算オーバーや」
「エクリプスクロスのガソリン車は20万円引きです」
 40万円くらいの値引きが出ないと、買う気になれへん。
 次は日産でノートに試乗。相手はラガーマンのような体格をした体育会系のセールスさん。
 e-POWERの出足はパワワフルかつ静かで好印象。ただし、ラガーマンが同乗しているせいか、室内空間がフィットやアクアよりも狭く感じる(笑)。後部座席の足元も狭そう。スタイリングはなかなか魅力的だが、妻を説得できるか、微妙だ。
 商談ではアクア、フィットとの競合を伝えつつ「値引き、頑張ってな」と攻めたが、7万円引きしか提示してこない。
 候補車をひと通りみてまわったところで、自宅に戻って家族会議を招集した。
 妻は座席空間と内装色からフィット、娘はスタイルと取り回しから「アクアかノートがいい」とのこと。息子が推すヤリスクロスは納期でボツ。エクリプスクロスも魅力を感じなかったためボツ。最終的にアクアとフィットに絞ることにした。

納期は未定、値引きは5万円 マジかい……買う気になれへん」

【3日目(土曜日)】 私の住んでいる地域は県境に近いので、越境作戦を実行する。
 隣県のトヨタB店に赴く。こじんまりした店舗だが、近所で採れた農産物などの販売をしており、アットホームな雰囲気。応対してくれたのは爽やかな若手で、どことなくNHKの朝のアナウンサー風だ。
「地元でも交渉しているけどアクアは値引きが渋くて困ってます。こちらのお店は勤務先に近く、ここで買った同僚も多いですわ。県越えしてきたので頑張ってくださいね」
「お世話になっています。ぜひ当店でお願いします!」
 提示してきたアクアの値引きは車両本体と付属品から15万円。やっと本気モードの交渉になってきたでぇ。ただし、頼んでもいない付属品がたっぷり計上されているため、支払い総額は240万円にもなっている。付属品の総額は約37万円! これを指摘すると、
「付属品を20万円以上付けていただかないと、値引きが出せないんですよ」
「オイオイ、要らない付属品、付ける気ないでぇ。支払い額をできるだけ下げたいんや」
「Xさん、いくらなら決めてくれますか?」
「支払い総額200万円といいたいところやけど210万円なら決めたる」
「う~ん……難しいですね。来週再度お越しいただけますか? このときになれば精一杯の金額をご提示できます」
 よっしゃ、再訪問を約束して引き上げる。
 続いて地元のトヨタC店へ。新人セールスらしき女性が出迎えてくれた。AKB系の明るさを感じさせてくれる。
 このあたりはトヨタの販売店がひしめく激戦区だ。それだけに「同士討ちは当たり前」と思っているようで、商談を始めるとすぐに「他店はいかがですか?」と、新人AKBらしからぬ探りを入れてきた。
「ほかは、いきなり15万円引きを出してくれたで」
「わかりました。うちも同額にできますよ」
「さらに上乗せはどれくらいいけるんや?」
「上司と相談させてください。次回はとんでもない金額が飛び出すかもしれませんよ」
 新人AKBと侮るなかれ。意外とこの店が突破口になるかもしれない。

【4日目(日曜日)】 本日はフィットを攻める。ホンダA店は5万円引きとガードが堅かったので、経営の違うB店へ。
「アクアは最初から15万円引きで、まだまだ上乗せがききそうです。ただし家内は座席空間の広さと内装の明るさでフィットがいいといっています。他のホンダとも交渉しているので、頑張ってくださいね」
「アクアは15万円引きですか……実は、フィットは10万円引きまでなんです……」
 付属品約18万円を含めて支払い総額は236万円。
「トヨタよりかなり高いで。もっと頑張れるやろ?」
「フィットはマイチェン後、売れ行きが好調なので値引きはあまりできないんです」
 トヨタを上回ると思っていたのだが想像以上に渋い。
 帰り道、トヨタA店に立ち寄ってみた。相手は例の息子と同い年の新人セールスさんだ。前回のアクアの値引きは5万円。これまでの状況を伝えると、
「Xさんのお宅からはうちの店が一番近いですよね。だから、ぜひ購入していただきたいと思っています。ご納得いただける金額を出します!」
「期待しとるで~。何かあったときのことを考えると、やっぱ近所で購入しときたいしな。こちらの希望は支払い総額210万円や」
 すると、いったん奥に引っ込んでしばらくして戻ってきた。提示してきた条件は値引き20万円、支払い総額225万円(付属品24万6400円を含む)。
「店長と相談したところ、今日決めていただけるなら220万円までは頑張れます!」
「家内はフィットを気にいっており、この数字では説得できる材料が足りないんや」
「Xさん、実はとっておきの案も用意させていただいています」
 なにを出してくるのかと思ったら「パッソの大幅値引き」だった。どうやら「娘が運転しやすいクルマを希望している」と伝えておいたので、これに合わせてきたようだ。
 しかし、松本さんによれば「パッソは近々、ドロップ(販売終了)となります。だから在庫整理のバーゲンセール中です」とのこと。したがって、大幅な値引きを出してきても、あまり魅力を感じない。残念ながら新人君は私の本心を深掘りできてないよ。営業としてはまだまだ勉強が足りんなぁ。「この店から買いたい!」という熱い気持ちが急に冷めていくのを感じつつ引き上げた。
 帰宅後「今回はアクアに決めたい」と妻を説得。すると「運転する本人が気にいっているならアクアでいいわ」とすんなり同意してくれる。しかも、阪神タイガースは今日も勝った。とても気分がいい(笑)。
 さあ、トヨタに絞って勝負を決めるでぇ。目標を支払い総額215万円とした。

「同じ金額なら近所の勝ち!」殺し文句に「限界を超えます!!」

【5日目(土曜日)】 いよいよ最終週。まずは新人AKBのいるトヨタC店へ。事前TELしておいたものの、納車の対応で手が離せないとのこと。入店時には挨拶に来てくれたが、とても忙しそうだ。
 代わって応対してくれたのはマネージャークラスの中堅セールスさん。先日、新人AKBは「とんでもない金額が出るかも」といっていたので、ひそかに期待する。
「ズバリ、215万円が希望です。なんとかなりませんか?」
「Xさん、これまで乗ってきたクルマ、下取りに出さないんですか?」
「20年乗ったランサーなんで、値はぜんぜん付かへんやろ。せやから息子に譲ることにしているんやけど……」
「すみません、いちど見せていただけませんか?」
 というわけで、ランサーセディアの出番となる。時間をかけて査定してくれた。
「とても丁寧に乗られていますね。走行距離も6万kmまでいっていないので特別に7万円で下取りします。まあ、値引きが半分以上含まれていると考えていただいて結構ですが……」
 さすが、マネージャークラスとなるといろいろ知恵を絞ってくれる。提示してきたアクアの見積もりには値引き22万円、下取り6万9000円、支払い総額215万円(付属品24万7610円を含む)となっていた。
 おおっ、ついに目標の215万円に到達! 今の今までセディアを下取りに出すつもりはなかったが、7万円弱の査定額が付くとなると心が傾く。
 しかし、息子に譲ると約束しているので即断はできない。結局、「明日まで回答を保留させてもらう」ことにした。
 なお、息子に確かめると「通勤の足としてクルマが必要なので、セディアを譲ってくれないと困る」とのこと。やはり下取りに出すわけにはいかない。

【6日目(日曜日)】 いよいよ勝負! 本日で決めるでぇ~。
 作戦会議で松本さんから「アクアを攻略するならトヨタ同士の争いが決め手」と聞いていたが、つい最近、近所のトヨタの販売店が合併したため目論んでいた競合ができなくなってしまった。そこでトヨタのホームページをチェックしたところ、近くにもう1店、別経営のトヨタD店があることに気がつく。
 午前中早速、訪問。応対してくれたのはいかにもリーダーという感じのセールスさん。これまでの経過を伝えると、
「なるほど、わかりました。ご協力いたします」
 さすがベテラン、話が早い。なお、支払い額をできるだけ下げるため、付属品の総額を12万円台まで絞った。
「希望額はズバリ、215万円です。下取り車はなしです。何とかできませんか?」
「相談させてください」
 いったん奥に引っ込んで、しばらくして戻ってきた。
「こちらも一発勝負でいきます。220万円が限界なんですが、今決めていただけるなら217万円までなんとかします。ただ、ひとつだけ条件があります」
「えっ、なんですか?」
「支払いの一部をローン扱いにして欲しいのです。支払い額は217万円に抑えるので、いかがでしょうか?」
「う~ん……ローンねえ……」
「これは今日限りの限定条件です。明日以降は白紙に戻ってしまいます」
「わかりました。本日中に返事をします」
 この店舗、自宅からの距離はトヨタA店とさほど変わらない。となると、ここから購入するのもありかもしれない。
 午後、越境して隣県のトヨタB店に乗り込む。NHKアナウンサー風のセールスさんが待ち構えていた。前回の商談で「今週末なら精一杯の金額をご提示できます」といっていたので、大いに期待している。
「なるべく支払い総額を下げたいので不要な付属品は外しました。その上で最低ラインを215万円に設定しました。地元・大阪のトヨタと同じくらいの金額になったら近いほうを優先することになります」
「う~ん……正直、215万円は厳しいですね。でも、今日決めてもらえるのであれば、精一杯頑張ります!」
 爽やかなアナウンサーの笑みはすっかり消えて真剣な表情に変わっていた。
「215万円以上なら大阪で購入することになると思います。なんとしても215を割り込む最終額を示してください」
「実は、今日は近くに会社のえらい人が来ています。役員決裁を仰ぎますので、しばらくお待ちください」
 なるほど「精一杯の条件が出せる」というのはそういうことだったのか……。
 待つこと30分、朝方降っていた雨もすっかり上がった。アナウンサー氏が緊張した面持ちで戻ってくる。
「役員決裁が下りました。214万円です。決めてください!」
 越境したかいがあった! しかし、もうひと押し仕掛ける。
「最後に1万円プラスするのでETCを付けてもらえませんか?」
「もう限界を超えています。ETCは勘弁してください。かわりにガソリン満タンで納車します」
「わかりました。頑張ってくれましたね。決めましょう!」
 これにて終了。注文書には車両本体とメーカーオプション12万6500円から24万30円引き、付属品12万4080円から3万円引きとなっていた。もちろん全額現金での購入です。

購入データ
TOYOTA アクア
X
From大阪府
トータル値引き 27.0万円
値引き採点 5
車両本体とメーカーオプションから約24万円、付属品(12万4080円)から3万円で合計約27万円引き。値引き率は11.5%でアクアのウルトラCの目安である10%を大きく超えている。


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内外出版/月刊自家用車

ライタープロフィール

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オーナードライバーに密着したクルマとクルマ社会の話題を満載した自動車専門誌として1959年1月に創刊。創刊当時の編集方針である、ユーザー密着型の自動車バイヤーズガイドという立ち位置を変えず現在も刊行を続けている。毎月デビューする数多くの新車を豊富なページ数で紹介し、充実した値引き情報とともに購入指南を行うのも月刊自家用車ならではだ。

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